無法地帯だからこそDeviantArtのアカウントを作っておくべきだという話
目次
DeviantArtというサイトがある。イラストや小説その他のアートに特化したサイトで、アメリカ版(海外版)pixivといったところだ。日本のジョシカク系アーティストの方でも折鶴兄弟さんや大和テクノさん、逆さにしたグラサンが似合う男さんなどが登録し作品を投稿している。かくいう僕もアカウントを作って投稿している。
(僕のアカウントは高校の頃閲覧用に作ったものを流用したから、実に13年目だ)
この記事で言いたいことだが、結論から言うと絵描きならばDeviantArtにアカウントを作って、できればイラストを投稿していくべきだ。ただ、それは主に自分に不利益が及ぶのを防ぐためである。どういうことか。順に説明していく。
DeviantArtのいいところ・悪いところ
まずは、DeviantArtのいいところと悪いところを説明していく。
いいところ
まずは、いいところである。
閲覧数が圧倒的に多い
DeviantArtのメリットはこれに尽きる。世界規模のサイトであるため閲覧数が圧倒的に多いのだ。
2020年11月から2023年1月まで、僕はpixivとDeviantArtに同時並行で作品を投稿していた。pixivに投稿した作品をほぼ同じ時期にDeviantArtに投稿していたのである。ゆえに、閲覧数の比較ができる。
こちらとこちらは同じ2021年7月1日に投稿した作品で、前者がpixiv、後者がDeviantArtである。閲覧数を比較してみよう。
前者(pixiv)はこの記事を書いている2023年2月16日現在で2165回閲覧されている。
それに対し後者(DeviantArt)はどうか? 閲覧数を表す目のマークのところには「11K Views」とある。「K」すなわち「Kilo」、つまり1000ということである。ということは、DeviantArtの方では1万1000回以上も閲覧されたということだ。
これは驚きである。同じ作品なのに実に5倍もの閲覧数の差がついたのだ。
もちろん、pixivとDeviantArtとでは閲覧数の集計の仕方が違うという可能性もある。しかしながら、それでも5倍もの違いが出るものだろうか? やはり、登録ユーザー数が圧倒的にDeviantArtのほうが多いということだと考える。最近でこそpixivは多言語対応しており、外国人ユーザーも多いが、それでも基本は日本語のサイトだ。それに対し、DeviantArtはアメリカを拠点とする英語サイトであり、世界で一番普及している言語は英語である。故に、世界中の人々が閲覧するのだと思われる。
世界は広い! 日本だけにとどまっていてはダメだ!
悪いところ
だが、逆に言えばDeviantArtのメリットはこれだけである。ここからはデメリットのオンパレードだ。
有料プランでないとできないことがある
例えば、pixivではユーザーが好きなときに自分のハンドルネームを変えることができる。Twitterでも然りだ。
しかしながら、DeviantArtはそうではない。なんと、Coreと呼ばれる有料プランに入らないと登録時のハンドルネームを変えることができないのだ。これは地味に大きな問題だ。僕のアカウントは前述の通り閲覧用に作成したものだったから、最初につけたハンドルネームは衛星放送の海外ドラマ専門チャンネル(SuperDramaTV)からつけたというとんでもなく適当なものだった。だから作品を投稿しようとなったときに大変困った。しばらくの間はそのままにしていたが、どうも収まりが悪く2021年4月についにCoreの最安プランに入って名前を変えることになってしまった。当然、名前を変えることだけが目的だったので、変えたら即解約したが無駄な出費だった。皆さんもDeviantArtにアカウントを作ることになったら名前をよく考えてつけるか、作品を投稿するアカウントを別に用意しておいたほうが賢明だと思う。
また、有料プランだと複数枚の作品投稿ができる(ただし、後述するように作品ページは別々になる)が、無料プランではそれができない。
ほかにも、Premium Galleryという有料会員だけが見られる作品ページ(pixiv FANBOXみたいなものだと思ってくれればいい)もCoreプラン会員でないとできない。そのため、収益化しようというユーザーはPatreonのような別の会費がいらないサービスを使うことが多い。
このように、有料会員でないとできない機能が「こんな事もできないの?」みたいな感じで結構ある。Coreプランの詳細については公式ページを読んでほしい。
有料プランであってもできないことがある
また、pixivでは(無料あるいはプレミアム会員で)できることが、DeviantArtではできないということもある。
例えば、一つの投稿で複数枚の絵を上げることはできない。上記のようにCore会員ならば一度に複数投稿ができるが、その場合も投稿が複数に分かれるだけで、1投稿=1枚のイラストという原則は変わらない。これは漫画などのシリーズ物の作品を投稿するのには不便だ。
また、スケジュール投稿もできない。pixivではプレミアム会員ならばできるが、DAでは金を払っても無理だ。僕にとってこれは不便だ。僕は最近pixiv及びtwitterではスケジュール投稿を利用して作品を投稿しているが、DAではいちいち手動投稿しなければいけない。
治安最悪
DAの治安ははっきり言って悪い。pixivがいかがわしい店がたくさんある繁華街、twitterが犯罪多発のスラム街だとすれば、DAは内戦地帯である。どんな被害があるか? 例として2つ挙げる。
スパムメッセージ
相手:
Hello! May I ask for a request please?
(こんにちは! リクエストお願いしていいですか?)
僕:
If this is your request, please use one of the following services for your order.
(リクエストのご用命は下記のサービスからお願いします)
(そう言ってSkebなどのリンクを貼る)
相手:
Free requests?
(無料のリクエストは?)
僕:
Sorry for that, I don't accept free requests now.
(申し訳ありませんが、無料リクエストは受け付けていません)
相手:
Dang. Why?
(チッ。なんで?)
僕のDAのNote(ダイレクトメッセージサービス)で実際にあったやり取りである。まさか文面で舌打ちをしてくる相手がいるとは思わなかった。相手のページを見ると、案の定「○○(僕以外のユーザー)は俺のリクエストを断りやがった! みんなで通報しろ!」などと言っているチンピラだったのでブロックしたが、このようにDAでは絵を描いてもらおうとダイレクトメッセージを送り付けてくる奴がいる。そういう奴にSkebなどを紹介しても、音沙汰がなくなるか「タダで絵をよこせ!」などとキレ散らかしてくるのが関の山だ。
その他にも、「あなたの絵を我々のサイトで売りませんか?」「うちの会社でイラストを描きませんか?」といった儲け話系のメッセージも来る。100%詐欺なので、通報するに限る。
無断転載無法地帯
DAにおける最大の問題である。ここより酷いところといったら、以前のAIの記事でも取り上げたDanbooruぐらいのものだろう。
とにかくTwitterやpixivから他人のイラストの無断転載をやってる奴が多い。トップページにおすすめの作品が表示されるのだが、ときどき「これはどう見てもpixivの○○さんの作品じゃないか(困惑)」という作品が他人のアカウントから投稿されている。
(コミッション(有償依頼)でその人が依頼した作品の場合も多いのだが、そうでない場合・説明文にそう書いてあっても実際には違う(コミッションで描いた作品ではない)場合も多数ある)
しかも、やってる奴のページを見ると一つや二つじゃなくて何十件も、それも複数人の絵描きの方の作品を無断転載している。最もひどいケースに至っては、それらの無断転載した絵をPremium Galleryに上げたり、Patreonなどの外部サービスに上げて金稼ぎしているようだ。
(もちろん、そんなのに金を払って確認する訳にはいかないから、確認はできていないのだが、おそらくそうだ)
幸いにして僕は被害を免れているが、それでも腸が煮えくり返る思いだ。
無断転載されないためにも、先手を取ってアカウントを作っておくべき
だが、ここで僕が言いたいのは「無断転載が横行している、だからこそアカウントを作るべきだ」ということだ。
無断転載の通報はアカウントを持ってないとできないし、著作者本人しかできない
なぜアカウントを作る必要があるのか? それは、無断転載の通報にはアカウントが必要だからだ。
DAの作品ページにはこのように「…」マークがあって、それを押すと「Report(通報)」というのが出てくる。ここから通報ができるのだが……
アカウントにログインしていない状態だとこのように、アカウント作成の画面が表示されてしまう。つまり通報にはアカウントが絶対に必要ということである。
さらに、通報ができるのはその作品を制作した著作者本人だけである。
ログインした状態で「Report」を押してみよう。すると、こんな画面が出てくる。
いくつかの選択肢が出てくる。この場合、「It violate intellectual property rights(知的財産権を侵害している)」を選ぶ。すると、次の画面になる。
「This is my intellectual property(これは私の知的財産だ)」か「This is someone else's intellectual property(これは他の誰かの知的財産だ)」という選択肢が出てくる。問題の作品が自分のものなら上を選べばいい。問題は第三者のものの場合で、その場合下の「This is someone else's intellectual property(これは他の誰かの知的財産だ)」を選ぶのだが、そうするとこんな画面が出てくる。
This deviation uses someone else’s intellectual property without the rights to do so. Copyright owners should use “This is my Intellectual Property.”
If you believe this deviation is using someone else’s content without permission, please read through this helpful set of journals since they may resolve many of the questions you may have.
DeviantArt protects the rights of artists and maintains the following Copyright Policy. If you believe this deviation is using third-party content which you yourself do not own or control, you may still comment under the deviation, if you wish, recommending to the deviant that they consult DeviantArt’s journal on art theft.
Thank you for your membership in DeviantArt and your continued commitment to the community.
どういう意味だろうか? 翻訳サービスDeepLで翻訳してみよう。
この逸脱(※)は、他人の知的財産を無権利で使用しています。著作権所有者は "This is my Intellectual Property "を使用してください。
この逸脱が他人のコンテンツを許可なく使用していると思われる場合は、この有用な一連のジャーナルに目を通すことで、あなたの持つ多くの疑問が解決されるかもしれませんので。
DeviantArtは、アーティストの権利を保護し、以下の著作権ポリシーを維持しています。この逸脱が、あなた自身が所有または管理していない第三者のコンテンツを使用していると思われる場合、あなたが望むなら、逸脱の下にコメントし、逸脱者にDeviantArtの芸術盗用に関するジャーナルを参照するよう推奨してください。
DeviantArtのメンバーシップと、コミュニティへの継続的なコミットメントに感謝します。
(※筆者注:DAでは投稿された作品のことを「deviation(逸脱)」と呼称している)
つまり、「第三者が作品を著作権侵害で通報することはできない。作品のコメント欄で『他人の作品を勝手に投稿するな』と書くことはできるが」ということである。実際、このあと「Submit」を押しても何も起こらない。著作権侵害作品は依然として残ったままだ。
ふざけるな、と言いたい。どう考えても他人の作品を無断転載しているのに、作者本人以外は通報できないってのかよ。とはいえ、第三者にはこれ以上何もできない。できることといえば、著作者本人に「DeviantArtにあなたの作品が無断転載されている」と言う事ぐらいである。
DAにアカウントを作っておくべき理由はこれである。万が一無断転載されたとき、通報するためだ。
(実際、逆さにしたグラサンが似合う男さんは無断転載の通報のためにアカウントを作ったという)
作品を投稿しておくことで、無断転載を予防する
しかし、もっといい方法がある。それは、DAにも作品を投稿しておくことだ。
なぜ作品を投稿するのかというと、それが無断転載を予防することになるからだ。無断転載をする人間がどんな作品を選ぶかというと、DAにまだ作者本人によって投稿されていない作品を選ぶのである。逆に言えば、もう作者本人によってDAに投稿されている作品はうまみがない、だから無断転載されない、ということだ。
(もちろん、もうDAに投稿されている作品を自分のアカウントで無断転載していた恥知らずもいた。だが、そういう作品にはたいてい「これは○○さんの作品じゃないか(憤怒)」といったコメントがついている。作者本人のアカウントに報告が行きやすいだろう)
さらに言えば、作品を投稿しておくことで世界中のDAユーザーに作品を見てもらえる。そして、そこからpixivやTwitter、FANBOXといったサービスへの誘導ができるのである。ただ「通報するためにアカウントを作っておく」というよりも攻めの姿勢でアカウントを活用した方がいい、ということだ。
英語は翻訳サービスで大抵なんとかなる
とはいえ、DAというのは英語圏のサイトだ。登録ページの文言も英語だし、登録したあとのページもみんな英語で書かれている。作品の説明文も英語で書いた方がいいし(日本語で書いたら文字化けする、などということはないが、確実に読まれないだろう)、他のユーザーとのやり取りも英語の場合が多い。
(スペイン語圏などのユーザーも多いが、圧倒的に多いのは英語圏だ)
日本人は英語に弱い人が多い。特にジョシカク系絵描きの人には英語を見ただけでパニックを起こすような人が多い印象がある。そんな人にとっては「英語圏のサービスを使うなんてとんでもない」という話にもなるだろう。
確かに、異なる言語でのやり取りはなるべく避けたいだろう。僕だってそこまで得意ではない。
しかしながら、現代においては翻訳サービスという最大の味方がある。それを最大限活用していこう。
翻訳サービスというと多くの人はGoogle翻訳を連想するだろう。確かに、これは最もポピュラーなサービスだし、精度も20年前に比べれば向上している。しかしながら、もっと精度のいいサービスがある。それが、上で挙げたDeepLというサービスだ。使ってもらえばわかるが、こちらのほうがより文章を正確に翻訳できるし、会話文のくだけた表現でさえ翻訳できるのである。英文→和文だけでなく、和文→英文も可能だし、29の言語の相互翻訳が可能だ。使わない手はないだろう。
(ただし、和文英訳で一度に複数の文を翻訳しようとすると、途中の文が翻訳されなかったり、一度翻訳した文を重複したりすることが多い。正確な訳を求めるなら、一文ずつ翻訳していくことが必要だろう)
DeepLはWindows・Android・ChromeOS・Mac・iPhone・iPad向けのアプリがあるし、Chrome・Edge用の拡張機能もある。これらを使っていけば、簡単に英和・和英翻訳ができる。特にWindowsユーザーならばWindowsアプリは入れておくべきだ。翻訳したい文章をドラッグし、CtrlキーとCキーを2回連続で同時押しするだけでアプリが起動して翻訳してくれる。
(ただし、DeepLも万能ではない。Webページ全体の翻訳やWordファイルまるごとの翻訳は有料版の機能になるのだ。あくまで無料で使おうという場合、部分区切りで翻訳していくしかない。)
また、現在βテストの段階だがDeepL Writeというサービスも注目だ。これは翻訳サービスではなく校正サービスで、英文を入力するとより自然な形に校正してくれる。和文をDeepLで英訳したあと、DeepL Writeで校正するという使い方ができるだろう。
これらのサービスを使えば、英語が苦手でもDAを使っていくことができるはずだ。
攻めの姿勢でDeviantArtを使っていこう
最後に、繰り返しになるが「守りの姿勢」ではなく「攻めの姿勢」でDAを使っていくことが重要だ。
DAははっきり言って治安が悪く、スパムや無断転載が横行している。だが、だからといって避けていても、無断転載されるというリスクは降りかかる。pixivやTwitterからいくらでも転載するイラストは取ってこられるからだ。
(特にpixivでは相手をブロックしていても作品を見られてしまうし、ダウンロードもできてしまう。この点はpixivに改善を求めたい)
ならば、逆にこっちから作品をDAに投稿し、無断転載防止だけでなくむしろマーケティングにつなげていく、といったほうがより自分のためになるだろう。
ぜひ皆さんもDAにアカウントを作ってみて、作品を投稿していってもらいたい。世界に向けて作品を投稿していこう。